今までやってきた作品を思えば、拳で殴る、槍が飛び交う、銃の発砲と暴力のない作品は、少なくとも西洋の長編モノでは、なかったかと思う。一番最初の夏目漱石の『それから』ぐらいだろうか。あとは、何がしか暴力的な作品があるものがこれからも多く出てくる。
文字や朗読による表現なので、生の映像などよりは衝撃は弱いとは思うが。
さて、今朗読している『ボヴァリー夫人』は暴力的な描写はエンマが暴れるときぐらいで、それも大したものではない。それでも古典化している珍しい作品である。
しかし、エンマの所業ゆえにハデな作品という印象を読後には受けるであろう。暴力は少なくともハデというのを実感していただければ、と思う。
また日常生活の緻密さもかなりのものなので、そういった描写も味わってくださればと思う。